魑魅魍魎の追い掛け回されること3分。
逃げ回ったせいか、元から散らかっていたのか、
の部屋は見るも無残に散らかっていた。
「部屋が…」
「元からあまり変わらんだろうが」
つぶやいたにシオンのいらないツッコミが入る。
「それにしてもやりすぎだぞ、シャカ」
「そんなことはあるまい。私は君たちに頼まれてやったのだよ」
「さすが唯我独尊サマは言うことが違うねぇ」
アイオリアとデスマスクがそう騒いでいると、
かろうじて壁にかかっていた時計を見たアルデバランが声をあげた。
「おい。そろそろ出発せねば計画が潰れてしまうぞ」
その声に全員が壁の時計を見ると、なるほど予定より15分ほど遅れている。
「これはいかん。配役を決めねば」
「配役?そんなのあったのか?」
白いシーツから突然メモ帳を取り出したカミュの手元をアイオリアが覗き込む。
「当たり前だ。そうでなければこの計画は成功しないと思ってな」
アイオリアをちらりと見やると、カミュは全員にペンを渡して。
「この線の上にそれぞれ名前を書いてくれ」
言われたように全員がそれぞれの名前を書き込んでいく。
合計15人。
最後にカミュは自分の名前を書き入れてメモ帳の折られた部分を開いた。
「屋根?なんだこれは?」
「俺は脱衣所と書いてあるぞ?」
口々にそう騒ぎ立てるおばけたちをカミュは制して。
「サガほどの男。正面から向かっても返り討ちに遭うということだ」
「なるほど。カミュの言葉にも一理あるな」
この中ではカノンについでサガと付き合いの長い男、アイオロスがつぶやく。
「しかもアイツはかなり勘がきくんだ」
「そういや、たいていのことは言わずも見抜いていたな」
カノンとそう頷きあうと、アイオロスはもう一度その紙を覗き込んだ。
「しかし、これで一斉に向かったとしても効果は半減するのではないか?」
今まで押し黙っていたシュラが口を開く。
それにアフロディーテがにやりと笑って。
「もちろん一斉に向かえとは言わないさ。きちんと順序はある」
「うむ。それを昨日考えていたのだ」
その言葉と一緒にカノンがまた小さなメモ帳を出す。
「俺が調査したサガの行動だ」
「まるで密偵だな」
「いや、ある意味一番向いているのかもしれん」
口々にそう言いながらメモ帳を覗き込むと、
この1週間のサガの行動が事細かにタイムテーブルにして書き込まれている。
「ふむ。夜の行動はだいたい決まっているな」
「教皇の間で仕事を終えた後はあの大浴場か…。サガらしい」
リサーチは完璧で、サガの行動が手に取るようにわかる。
「つまりこれを元に数ヶ所に分けてサガを驚かせよう、そういうことだな」
「その通りです」
計画をいち早く捕らえた童虎にアフロディーテが頷く。
「一回ではどうにもならんでも、数回に分ければさすがのサガも…」
「サガといえども人間。数回に渡る恐怖にはさすがに敵わんということか…」
しだいに皆の顔に不気味な笑顔が広がっていく。
どうやらもう完全に計画に乗ったらしい。
そんな中、は一人だけ。
(あのサガがこんな格好で驚くのかしら…)
皆の格好を見渡しながら、ふとそんな疑問を頭に浮かべた。