「なんだか皆思い思いの格好ねぇ・・・」

集合した黄金聖闘士たちの格好を見ては思わずそう言った。
目の前で繰り広げられるその光景は
もはやハロウィンというよりもカーニバルのような。

しかし、約1名。
フランケンシュタインやらゾンビやら悪魔やら、
一目で見ておばけとわかる中に異彩を放つ、真っ赤なもこもこの塊が。

「・・・デスマスク、何それ?」
「は?おばけっつったらコレだろうが?」
「・・・・・ム●ク?」
「なんだそりゃ?」

某子供向け番組の人気キャラクターの紛い物のような姿。
と同年代の日本人なら必ず「ム●ク」だと思うだろう。

「何?は『ベッドの下のおばけ』を知らないのか?」

小人と思しき格好をしたアイオロスが不思議そうに尋ねる。
なんと、アイオリアと色違いのおそろいである。

・・・・・どこから見ても『巨大な小人』なのだが。

「ベッドの下のおばけ?何それ?」

呆けて聞き返したに悪魔の格好をしたシュラがチッチッと指を揺らす。

「ヨーロッパではどこにでもいるおばけだぞ?毛むくじゃらで・・・」
「爪が長くて、夜、ベッドの下から襲い掛かってくるんだ」
「小さい頃、よくその話聞かされて眠れなかったよなぁ」

シュラに続いてミロとアイオリアが口をはさむ。
アイオリアが軽くアイオロスをにらんでいるのは、
きっと小さい頃の嫌な思い出の元凶が彼にあるからなのだろうか。

「おばけっつったらコレしか思い出せなかったんだよなぁ・・・」
「でも一番懐かしいおばけでもあるよな」

デスマスクの呟きにカノンがちょっと嫌な顔をしながら同調する。
・・・彼もどうやらアイオリアと同じ理由であるようだ。

「まぁ、ヨーロッパでおばけっつったらコレなんだよ、わかるか?」
「うん。そういうことにしとく」
「おい!」
「はいはい、漫才はそれで十分ですよ」

いつものように口喧嘩を始めたデスマスクとの間にムウが割って入る。
そんな彼は普段の「優しいムウ様」もどこへやら、
今にも死臭の漂ってきそうなほどリアルなゾンビ姿である。
横にいるちっこいゾンビはもちろん貴鬼だ。

(リアルだけど、親子ゾンビ・・・。笑える・・・)

ちろちろ動き回る貴鬼を制するムウの姿に
はそう思わずにはいられなかった。

「しかし、老師。その格好は何ですか?」

ハマリ役大賞があるのならまず優勝できそうなほど
フランケンシュタインになりきっているアルデバランが童虎に尋ねると。

「フォッフォ。これは・・・」
「それキョンシーだ!!」

すかさず、が童虎の袖をひっぱり笑う。

「そうじゃ、よく知っておるのぅ」
「ちっちゃい頃、テレビでやってたよ?お札つけてないから暴走するんだね?」
「その通りじゃ。は賢いのぅ」

孫とおじいちゃんの会話をする20歳と見た目18歳。
多くの黄金聖闘士たちはその光景に異様さを感じていたが、
なぜかアルデバランだけはひっそりと感動している模様である。

そんな風に皆が仮装をしてわいわいやっている中、
ただ一人普段と変わらない男が。

「シャカ。なぜ何も仮装をしていないのだ?」
「む?そういえば。ちゃんと仮装して来いと言ったではないか」

主要発案者の中のカミュとアフロディーテがシャカを問い詰める。
他の皆も心なしか「なぜだ」と言わんばかりの表情である。
そんな中、フッと笑いを漏らしたシャカは。



「「「「「「「「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」」」」」」

「こんなもので構わんだろう」

瞬時にそこは魑魅魍魎のはばかる地獄絵図と化す。
そんな中そっとほくそえむシャカの周りに黒いオーラを見た牡羊座の師弟は。

「まったく侮れん奴じゃのぅ・・・」
「昔からあぁでしたよ、昔から」

追いかけ回されている仲間を助けようともせず、
シャカの根底にある恐ろしさを改めて実感したのだった。




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