「なんなのよコレー!!」
着替えを終え扉を開けた瞬間、は叫んだ。
「ん?よく似合ってるじゃないか」
「おぉ!やはり私の見込んだとおりだ!」
「これのどこがピッタリなのよ〜〜〜〜!!」
が着ているのは黒いワンピースただ一枚。
色っぽく肩丸出しであってもただそれだけのワンピースである。
「こんな格好イヤ――――!」
「まぁ、待て。オプションもあるのだ」
そう言ったカミュが取り出したのは大きなリボン。
しかもご丁寧にカチューシャに取り付けてある。
ついでに取り出されたローブをの肩に回して。
「そしてこれをだな、こうつけると・・・完璧ではないか!!」
手を叩いて喜んだ4人を尻目に居間の鏡を覗き込むと、
なんやらどこかで見たことのある格好をした自分がいた。
「これってさァ・・・もしかしなくても・・・」
「ついでにコレも」
カノンが差し出したのはほうきと黒い猫のぬいぐるみ。
「すげー!!コスプレだ、コスプレ!!」
「こら。そんなに足を広げてははしたないではないか」
仁王立ちで鏡の前で固まるに色んな声がかかる。
それにくるぅりと振り返って。
「ねぇ、コレなんのつもり・・・?」
「「「「魔女」」」」
「どこから資料を・・・」
「氷河がお土産に置いて行った日本のアニメだ」
「かなり感動するんだぜ!魔女の修行をしてる女の子が宅配業をするんだ!」
「モップでも空を飛べるのだ」
「あのメガネの少年との行く末が気になるな・・・」
「あんたら全員見たんかい・・・」
青年たちが口をそろえて言うのは某有名アニメ。
もちろんも見た記憶がある。
しかし。
「でもこれちょっとデザインが違うんじゃない?」
の記憶している中では確かもっとのっぺりしたワンピースだったはず。
「それは、君の年齢に考慮して少し大人っぽくしてみたんだよ」
「普段色気ない格好してるのでな、こんな時くらいそんな格好もいいだろう?」
「ほら、馬子にも衣装って言うだろ♪」
いらない一言を付け加えたミロにエルボーを食らわすと、
はさらに無言で殴りかかろうとする。
「ちょ・・・なんで殴るんだよ〜!」
「これが殴らんでいられるかッ!!」
「・・・ちょっと意味がわかってなかったみたいだな。
ミロ・・・。あとでその理由を教えてやるから・・・」
座り込んだミロをかばうようにカミュがを制止する。
頼んだわよ!と押しの一言を加えるとはワンピースのすそをつまむ。
「ねぇ、コレどんくらい時間かかった・・・?」
「そうだな。一日くらいかな?」
「その猫のぬいぐるみに苦労したのだ」
「服は・・・?」
かすかな疑問を胸にがアフロディーテに問いかけると。
「大丈夫。10分でできたぞ」
「気にするな。私のなんか3分だ」
目のところだけ穴をあけたシーツをかぶったカミュが目を細めて呟いた。
・・・足のところから黒いスパッツがのぞいているのが気になるところだが。
「この中だと・・・アフロディーテが一番手間かかってそうね」
大きなローブを羽織り、ドラキュラに扮したアフロディーテを見る。
確かにあちこちにバラをあしらったそのデザインは
ハロウィンの仮装というにはちょっと凝りすぎた感もある。
「なんか映画に出てくるみたい〜」
「ふ。私の美しさゆえ余計にそう見えるのだろう?」
「お前、いつもそればっかじゃん」
ミロが想像したとおりの答えを軽く流して、同じような黒いローブを翻す。
マントさばきを普段から気にしてるだけあって、その翻し方も超一流。
「ミロのそれは何?」
「もちろん、死神★」
首に巻いた骸骨の首飾りが派手な音を立ててぶつかり合う。
「よく似合ってるだろ?」
「う〜ん・・・死神ってよりは〜・・・」
「なになに?」
「・・・アフリカの呪術師みたいv」
他の3人が笑い声を立てる中、
ミロだけがちょっぴり複雑な苦笑をもらしたのは言うまでもない。
ようやく笑い声が落ち着いたころ。
「それにしても遅いな・・・」
「何が?」
ミイラに扮したカノンがしきりにドアの方を気にしているのに気付く。
「誰か他にも来るの?」
「あぁ、あと一人どうしても来たいという方がいらっしゃってな」
カミュの妙に丁寧な口調にが怪訝な顔をした時。
「お、いらっしゃったようだ」
アフロディーテが顔を上げた瞬間、
盛大な音を立てて家のドアが吹っ飛んだ。