「いいですか。私の合図で飛び出してください」
「百龍覇は仕掛けてもいいんかのぅ?」
「被害を最小限にする程度なら構いません」
「教皇が吹っ飛ばしたらいいんじゃないですか?」
「馬鹿者。年寄りを労わろうという気はないのか」
「自分がそう思い込んでるだけでしょう」

いつまでも尽きぬ話にカミュが終止符を打とうとしたその時。
自分たちの足元で何かが動いた気配がした。

「いけません!サガが動こうとしています!」
「なぬ?!急がねば!!」
「とにかく飛び出しましょう。5方向からですよ!」

互いに顔を見合わせた5人は、目的を達成すべく執務室の天井を蹴破った。





「カミュたちが仕掛けたようだな」

小宇宙を察知したカノンが呟く。
ちょうど、今までたまっていたパワーが落ちるのを感じたらしい。

「…ちょっと待て」

しばらく様子を伺おうとしたアフロディーテが眉をひそめる。

「何?どうかした?」
「カミュたちとは違った小宇宙を感じる」
「え?えぇぇぇ?!」

アフロディーテが出した答えには思わず大声を出してしまう。
それを素早くシュラにふさがれ、もごもご言いながらも何とか声を出す。

「ちょ…それってデスマスクたちじゃないの?」
「そんなはずはない。彼らはここに向かうように言われてるはずだ」
「じゃあ誰?誰なの?」

事態の飲み込めないがシュラに詰め寄ろうとした時。


「あの男だ」

そう背後で呟いたのは、今までずっと様子を伺っていたシャカだった。



「よう。待たせたな」

いきなり聞こえた声に瞬間5人は振り向いた。
そこにいたのは、先ほどまで階段の所で張っていたデスマスクたち。

「な…何だよ、そんな怖い顔して」

ひるむような声を出したミロを制してカノンが手招きをする。

「何か感じないか?」
「何を?」
「いいからカミュたちの様子を探ってみろ」

そう言われて到着した5人も執務室の気配を探る。

「む。誰かいるようだな」
「そうだ。カミュたちの他に、だ」

アルデバランとアイオリアが顔を見合わせる。
横でいつになく真剣な顔をしたデスマスクが、小さく声を漏らす。

「おいおい、何であいつがいるんだ…?」
「あいつって誰だ?」

聞き返したカノンにデスマスクは驚きの色を隠せず。

「誰だって…、わからないのか?」
「ああ。俺の知ってる小宇宙ではない」

あくまでわからないと言い張るカノンに、痺れを切らしたのはアフロディーテだった。

「誰も彼もあるまい。君の兄ではないか」
「サガだと?馬鹿を言え」
「馬鹿など言ってはいない。あれは君の知らない兄なのだよ」
「俺の知らない、サガだと?」

シャカの言葉に怪訝な顔をしたカノンに。

「そうだ。俺たちが一番よく知ってるサガだ…」

そう答えたシュラにカノンがさっと顔色を変える。

「まさか…。そんなはずは…」

カノンが視線を移した先からは例えようのない気配。
それを感じた8人はそこから伝わる緊張を、ひしひしと感じていた。


「みんな、何わけわかんないこと言ってるんだろうね?」
「ほんと。おいらもよくわかんないや」

呑気に構える二人を残して。




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