「あ・の・ねぇぇぇぇ・・・・・!!」
「「ハ・・・ハイ」」
「あ・な・た・た・ちねぇぇぇ・・・・・」

ゆっくり言葉を紡ぎだすの形相にミロとカノンは
思わず互いの手を取り、部屋の隅にうずくまった。

そして。
ごくりと唾を飲みこんだ次の瞬間。

「うるさいってんのがわからんのかぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「「うぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」」

振り下ろされた怒りの鉄拳と共に、
なんとも悲壮な叫び声をあげることになったのである・・・。







10月も終わりのある日。
ミロとカノンは連れだって教皇宮近くにあるの小屋にやってきた。
目的はただ一つ。
彼女にある計画を持ちかけるためである。
そこまではよかった。

そこまでは。


小屋に着くとお目当ての本人はお昼寝の真っ最中。
じゃあ、起きるまで待っていようとキッチンに入り、コーヒーを淹れ、
ソファに座って昼間の奥様番組を見だしたのだ。
そして、ふいに入ったCMに二人して大爆笑してしまったのである。

その声がどうやら眠れる魔神を起こしてしまったらしい。

弁護すると、彼らにはを起こすつもりなどまったくなかったのだ。
もちろんやってることは普段と一緒だったし、
もそれで怒るというわけでもない。

ただ、タイミングが悪かった。しかも最悪に。
たまたまが遅くに寝て、
たまたま朝目が覚めてしまったついでに家事を終えて、
ミロとカノンが来た時、たまたま眠りについた直後だった。
それだけのこと。

偶然が重なった結果、
黄金聖闘士たる者が2人揃って頭にげんこつを食らうという、
ちょっと不幸でおかしな結末が待っていたというわけである。




話を元に戻して。

「んで。何かご用でしょうか、黄金聖闘士サマ」

にこやかにトゲのある言葉遣いで見下ろしてきたに、
ミロがさっと身を乗り出す。
どうやらもう機嫌が直ったと思ったらしい。

「あのな!俺たちいいこと思いついて・・・」
「待て、ミロ!」

次の言葉を継げる前にカノンがミロの肩をつかむ。

「な・・・なんだよ?」
「バカ。話をする前に言うことがあるだろう」
「え、何だよ??」

振り返ったミロを無言で見つめるとカノンはきっちりと正座した。

「こういう時はだ、な」

ミロが正座するのを確認して。

「こう手をついて・・・」

ようやく意味を解したミロが同じように手をつく。
そして。

「「申し訳ありませんでした」」

一斉に額を重ねた手の上にこすりつけた。


「さすがはカノン。土下座の仕方も一流ね・・・!」
「いつもサガにやらされてるからな。こんなものは慣れっこだ」
「カノン・・・。お前そこまでサガに・・・」
「大丈夫だ。に比べればサガなど赤子も同然」
「今なんて?」
「すみませんでした」

つい地雷を踏みつけたのを瞬時に理解したカノンは
もう一度、に向かって頭をさげた。





「で、さっき言いかけてたいいことって何?」

ソファに座ったはミロとカノンの顔を交互に見ると紅茶を一口飲んだ。

「あ、忘れるとこだった」
「そんな忘れるようなことなの・・・?」
「違う!もうチャンスは今しかない!っていうことなんだ」

横で無言で頷くカノンを確認して。

「なになに?面白かったら乗るわよ」
「うん。ちょっと・・・」

3人しかいないにも関わらず、
まるで機密を伝えるかのようにミロはこそっとの耳に口を寄せて。


「・・・どう?」
「面白そうじゃない・・・!よし乗った!!」
「そうと決まれば即実行だ!」
「でも準備はどうするの?」
「それは俺とミロですでに準備している。また夕方に持ってくる」
「そうそう♪だからは夕方まで寝てていいよ」
「そう?じゃあお言葉に甘えて・・・」





















「「。ベッドで寝た方が・・・」」

彼らは思わず呟いたが、時すでに遅し。
ソファの上には光速で夢の世界に旅立ったの姿があった。




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