Question



あの人は私の何処が好きなのだろう。

背だって小さいし、煙草だって吸うし──ここで問題なのは、向こうが吸わない男だという事──お酒だって好きだし、焼肉大好きだし…。
そこまで太っているとは思わないけれど、最近やばいと思ってダイエットの必要性に追われている。

比べて向こうはイイ男。

背が高いし、酒は強いし、顔はとんでもなく良いし…少々性格に難アリとは思う部分もあれど、優しいだけの男なんてつまらない。
少しくらいクセがあったほうが、惹かれるというものだ。
身体つきに関しては、もう何もいう事がないだろう。

髪の毛の色も、ころころ変える自分とは違って、流れるように綺麗な金色。

「本当に、サガって私の何処が良いんだろ…」

目にかかるくらいにまで長くなってしまった前髪を一束持ち上げながら、は長い溜息を吐いた。

サガの家。
まだ戻らない彼よりも早く中に入って、さっき淹れたお茶を味わっていた所だ。
お茶って、日本から持参したほうじ茶。
香ばしい匂いに誘われて、鼻をひくひくさせているとなんだか向こうが懐かしく感じる。

「帰ろうかな。もう結構あいつらの顔も見てないし…そうそう、お母さんにギリシャのアクセサリー買ってあげるって約束してたんだっけ」

家族と友人達を次々と頭に描きながら、は椅子の背もたれを利用して後ろに反り返った。
そこにサガの姿がなければ、目を閉じて思い出に浸っただろう。

しかし彼は居た。

「!!!! び、びっくりした!!」

驚いたあまり、ひっくり返りそうになっただったが、すんでの所で伸ばされたサガの腕によって事無きを得た。
テーブルの上の灰皿が、ゴトリ、と音を立てて揺れ動いたのが解る。

「お帰り、サガ…ありがと、もう大丈夫」
「…帰るのか」
「へ?」

体勢を立て直されながらがサガを見ると、相手は真剣な瞳で真っ直ぐにこちらを向いて尋ねてくる。
さっきの独り言は、聞かれていたようだ。

「あー…あれ…うん、まぁ…ちょっとした息抜きってやつ…?」
「お前は聖域の生活が苦しいのか」
「え?あ、いや…」

頭を掻きながらはサガの様子がいつもと違う事に気付く。
仕事で何かあったのだろうか。
それとも、自分の帰郷が気に食わないのか。
とにかく、寄せられた眉はいつものような苦笑するものではない。

「帰りたければ、帰るといい。なんだ、いつからの予定なのだ」
「ちょ、ちょっと待って…別に本気で考えているわけでは…」
「冗談ならばあまり私の手を煩わせるな。お前の里帰りには教皇への申請等が必要だという事を知っているだろう。私は忙しいのだから…」
「自分でやるよ、それくらい」

苛立った口調でまくし立ててきたサガの頬を、ぺちんと両手で挟んでは静かに制した。
やっぱりおかしい。

「どうしたの、サガ。辛い事でもあった?今日は早く眠ったほうがいいと思うよ。待ってて、私お風呂入れてきてあげる」

さっきまで自分が座っていた椅子に相手を即してやって、は風呂場へ走った。
蛇口をひねって湯を出しながら、視界が滲んだのは熱気のせいだとしておこうと思う。

あんなにサガが苦しんでいるのに、ほら、自分には何もしてあげる事ができない。
やっぱり何処が良いのか、わからない。

とぼとぼと居間に戻ると、サガは座ったままでが飲んでいたほうじ茶を見つめていた。

「あ、サガも飲む?お茶。美味しいよ」
「………」

返事は無かったけれど、否定はされなかったのでよしとして、は今度はキッチンに入った。
こうしているとまるで夫婦のようで、それが少し心を和ませる。

でも、役に立っているのかな。


「うわっ、やばっっ!」

ぼうっとしていたは、沸騰する湯を抱えたケトルに気づくのが少し遅れた。
様子を見に来たサガが声を掛けなければ、蒸気によって蓋が飛んでいただろう。
慌てて火を消してが苦笑いすると、サガもやっといつもの笑みを取り戻したように表情を柔らかくさせた。

「まったく…お前は私がいないと駄目だな」
「…そんな事。サガこそ、私がいなければ駄目なんじゃない?」

サガの優しい言葉につい軽口を叩いてしまったが、はたと気付く。
この質問は、自分が悩んでいた事そのもの。

もし、いらないと言われたら?

「……そうだな」
「…え」
「そうだな。私はお前がいないと駄目だろうな、きっと」
「…サガ…」

だけれど、相手の口から出てきたのは一番嬉しい言葉。

一瞬頭の中を白くさせて、はそれからぶるぶるっと首を振る。
今言われた事は、現実だろうか。

自分の顔がどんどん笑っていくのが感じられる。

「サガ、サガ、それホント?」
「嘘をついてどうなる。…私の本心だ」
「嬉しい、めっちゃ嬉しい…」

ぎゅうっと首に両手を巻きつけて、胸に顔を埋めて。

「私の問題だから、何があったのかを深く聞かないでいてくれる事を感謝する」
「へへ。言いたくなったらサガから言うだろうと思って」
「ああ」

こうして。
と、サガは続けた。

「…こうして、私の傍に居てくれる事を、感謝する」
「………ん」

そうだ。
自分に出来る範囲で、彼の役に立てばいいではないか。

今度こそ涙を見せて笑ったに、サガはそっと唇を落とした。







「さっきの質問だが」
「は?質問ってどの質問??」

きょとんとしたは、ほうじ茶を片手に持ったサガが悪戯めいた笑みを向けてきた事に背筋をびくんとさせる。
なんだってそんなに誇らしげなのか。

「私はお前のその髪の色は似合っていて好きだし、酒を飲んで渡り合える所も食欲旺盛な部分も気に入っているし、小柄な所を可愛らしく思うし、煙草もきちんと周りを気遣って吸う部分がとても良いと思っているのだぞ?」
「……へ?」

まさか。

…まさか。

「…サ、サガッ。もしかして私の呟き、全部聞いてた…!?」
「さて、何の事だ。ああほら、湯が沸いたようだから早く入ってこい」
「ちょ!誤魔化さないでよ!うわー、ひどっっ。最初から居たなら早く声かけてよ!!」
「風呂に入ってこいと言っているだろう。…なんだ、一緒に入りたいのか」
「ちっがーう!!!」

じたばたと暴れるをひょいと抱えあげて、サガは風呂場への扉へを開ける。
面白そうに笑う彼の髪の毛の色は、気のせいか深い色に見えた。

「それに、抱き心地も良いし…な」
「うわ…この…変態…!!」

こうして、サガの家の風呂場では適わないと思い知らされるのだった。





今度日本に帰る時には、この人も一緒に連れて行ってみようか。






... & I like your singing voice



何も本名で送って来なくても!!(笑)

ねぇ、ふゆの姉さん!(笑)
どうして本名なんですか?!思いっきりのけぞってしまったではないですか!
これを編集している今でさえ『●子』って書かれてるの見て、自分の気持ちが落ち着かなくて困ってるんです。

あぁ、罪なお方…!>ふゆの

ふゆのの夢小説は本当に麗しいですわね〜。
サイト運営当時から思ってましたけど、何でこんなにそこはかとなくラブく、きれいにまとまるんざましょ。

てゆっかサガかっこよすぎ。
サガに「私はお前の(以下略)」なんて言われたら間違いなく昇天。

本物の私はこんなに気配りのいい子じゃないけどね★

ふゆの!本当にどうもありがとう!でも本名は止めてv(←照れて読めないから)