「なぁ、
「なぁに」

鍋の中をこねくり回しながら返事をする。

「なぁ、ちゃんと聞いて」
「聞いてるってば」
「そうじゃなくて・・・」

ミロはキッチンの椅子に腰掛けたまま、シャツを引っ張ってくる。

「もう、何なのよ・・・」

火を止めて振り返るといつになく真剣なミロがいて。

「ちゃんとまじめに聞いてくれるか?」
「いいよ。何?」

同じように腰掛けてミロの方を向く。
どうかしたのかな。 こんな真剣な顔、仕事以外ではしないのに。



「俺、のことが好きなんだ」



肩を掴まれて唐突に放たれた言葉に絶句。
今・・・。な・・・何て言った??
あたしのこと、好きって??ミロが??

・・・。起きてるか??」

思わず慌てて首を振る。
起きてるよ。起きてるんだけど・・・。

「で、返事」
「へ・・・返事?!」

あたしの間抜けな声にミロは力強く頷いて。

は俺のことどう思ってるの?」
「どうって・・・??」
「俺、の気持ちが知りたいんだ」
「きゅ・・・急にそんなこと言われても・・・」

どうしよう・・・。
どう言ったらいいんだろう。

「じゃあ、質問を変えて。俺のこと恋人にしたい?それともこのままがいい??」
「う・・・」
「これなら答えられるだろ?」
「・・・うん」

ようやく口を開いて出た言葉にミロの顔が太陽みたいに輝いて。



それが始まりだった。









「ミロ〜。ご飯できたよ〜」
「うん。今行く!」

普段ほとんど使われていない書斎でさっきまで仕事とにらめっこをしていたミロに声をかける。

「今日は何??」
「それは見てのお楽しみ♪」
「でもこの匂い・・・。ステーキだvv」
「大正解!」

食卓の上に並べられた皿とワインのボトル。
どう見たっていつもより数段豪華。
その意味にいち早く気付いたのかミロの顔がほころぶ。

も覚えてたんだ」
「ミロも??」
「当たり前じゃないか。特別な日だろ?」

そう言ってポケットを探ると。

「これ何だ??」

そう言って差し出されたのは小さな箱。
誰が見てもわかるその箱は。

「指輪・・・かな??」
「そ。指出して」

おずおずと右手を出す。
するとミロは左手を掴んで。

「こっちにはめたいんだ」
「でも普通は右手じゃない??」
「いや、今日はこっち」

そして、器用に片手で箱を開けると指輪を中指に通す。

・・・これって。



「なあに??」
「俺と結婚して」
「え??」
「今日、手続きの書類書いてたんだ。色々とあって遅くなっちゃったけど、もう済ませたから」
「仕事してたんじゃないの??」
「俺がそんな真面目に仕事すると思う??」
「そんな自信たっぷりと・・・」

半分呆れながらも嬉しくて嬉しくて。
そう思ってたらなんか目頭が熱くなってきて。

?イヤなのか??」

不安そうに肩を掴むミロの姿が見えて。
横に小さく首を振ってその胸の中に飛び込む。

「・・・
「イヤじゃないの。すごく嬉しいの」

左手の指輪を握り締めて。
だってまさか一緒に過ごせる日が来るなんて思ってなかったから。
ココは恋人になることさえ許されないようなとこだから。

、返事聞かせてよ」

それは2年前の今日と同じ台詞。
でもすごくあったかい感じがして。


ねぇ。
この言葉を言ったらまた太陽みたいに笑ってくれるよね?

その笑顔が一番好きなの。
だからもう一回見せてね??



向き直って口を開く。







次の瞬間。


目の前に大好きなあの笑顔が広がった。


<THE END>