「きゃーvvすごーい!凱旋門っておっきい〜!!」
「そんなに騒いでいると車に轢かれるぞ」
「大丈夫!!」


その時。


パパパーーーーッ!


そう大きなクラクションを鳴らして後ろを風がすり抜けた。

「だから言っただろう」

カミュがいつもと変わらない無愛想な顔で言った。
でもその顔にはちょっと勝ち誇ったような彩もあって。

「今、ちょっと『よっしゃ!!』って思ったでしょ!!」

って言ったら、『思うか、お前じゃあるまいし』って!!

もう素直じゃないんだから。
でもそんな無愛想な彼があたしの恋人。
そんなとこも、あたしは大大大好きだったりする。



「ねぇ〜!カフェでオシャレにお茶した〜い」
「喉が渇いたのか??」
「そうだけどオシャレなカフェしたいの!!」

自分でも意味不明だな〜とか思いながらもおねだりしてみたり。
恋人と二人でカフェなんてステキじゃない??
それも華の都・パリでよ??

世界で一番ステキなカフェタイムだと思うんだけどなぁ。




あたしのワガママに慣れっこのカミュは溜息をついたりしながらも連れて行ってくれた。

シャンゼリゼ通りに面したとあるオープンカフェ。

あたしはカフェ・オ・レ。
カミュはブラックを頼んで。


・・・でもなんか違う。

「もうッ!オシャレじゃな〜い!」
「何がだ。が飲みたいって言ったんじゃないか」
「そーじゃなくてッ!車クサイ!!」
「当然だ。どこの田舎だと思ってるんだ」
「フランスの首都パリ」
「で、ここは??」

カミュの指差す先には車の行き交う大通り。

「・・・シャンゼリゼ通り」
「正解だ♪」

なんか言い包められちゃってちょっとクヤシイ。
ふてくされてストローをちゅーって吸ったら。

はいつ見ても飽きないな」

そう言ってあたしの髪をすくって笑って。

あぁ、なんでそんなにキレイに笑うの??
よけい好きになっちゃうじゃない。

カミュのバカv






喉の渇きも潤って。
これでもかってくらいカミュの笑顔も堪能して。

「さ、次はどこ行くんだ??」
「んっとね〜、エッフェル塔!!」
の選ぶ所は観光地ばかりだな」
「だって観光客だもん♪」
「・・・そうだったな」
「いいじゃない。普段エッフェル塔になんて行かないでしょ??」

あたしも地元の観光名所なんて行かないし、って指をくるくる回したら。

「まったくもってその通りだ」

そう言ってまた優しく微笑む。
あたし、ほんとにこの笑顔に弱いんだなぁ。

いつものポーカーフェイスも好きだけど。
あたしにだけ見せてくれるこの笑顔が一番好き。

あたしだけに、ね。






店を出て。
小さな路地をいくつか抜けて。
二人で他愛もないおしゃべりして。



・・・でもかなり歩いてるような気が。

あたしはことの真相を確かめるべく、
繋いでいた手を少しひっぱる。

「もしかして、歩いていくの??」
「あぁ、2キロぐらいだから大丈夫だろう??」
「えー?!2キロも?!」
「周りを見ながら歩くのもいいもんだぞ」
「・・・うーん。そうだねv」

あたしってば単純・・・。
でもいっか。
カミュとこうしていられるんだもん。

今、ほんとに幸せvv





そのままイエナ通りを南へ。

ギメ美術館やシャイヨー宮を抜けて、
もう少しでセーヌ川。
その奥にようやくエッフェル塔が近づいてきた。

「やっと近くまで来た〜」
「あぁ、後少しだ」

そんなこと言ってたら。



ぽたっぽたっ。


「雨・・・??」

そう言って空を見上げるといつの間にか雲が立ち込めていた。
さっきまでけっこう晴れてたのに。

空から落ちて来る雨粒はどんどん増えていって。

「何をしてるんだ、早く!」

カミュの声が聞こえたと思うと
腕を強く引かれて、店の軒先に引っ張り込まれた。

「まったく!濡れたらどうするんだ!!」

あたしの頭に乗った雨粒を払って。

「ごめんね」
「別に謝ることじゃないさ」

そう言って頭をなでてくれる。
それが嬉しくって笑いながら顔を上げた。


ぐぅぅぅ。


ぐぅぅぅ??
何??何の音??


くぅ。


発信地は・・・あたしのおなか?!

え、嘘?!
やだ恥ずかしいッ!!


顔が真っ赤になってくのが自分でもわかって。
慌てたあげくカミュの胸に突っ込んでしまった。

「い・・・今のはナシ!!」
「いや、しっかりと聞いたぞ」
「・・・忘れてくだサイ」
「それは出来んな」

ぐりぐり頭を押し付けたらぎゅって強く抱きしめてくれて。
しばらくそうしてたら。

「ほら、止んだぞ」

頭をぽんぽん叩かれて。
ふと通りの方に目をやると、そこにはまたやわらかな日差しが戻っていた。

「もうあがったんだ」
が暴れているうちにな」
「もうッ!暴れてないってば〜」

そう言って笑いながら通りに出る。

もう目の前はセーヌ川の橋があって。
エッフェル塔を見ようとふと顔を上げた。




すると。


「あ、キレイ・・・」

思わず感嘆の声を漏らしてしまう。


あたしの目に飛び込んできたのは
エッフェル塔をまたぐようにかかる虹の橋。

「キレイだな・・・」
「うん・・・」

二人でその美しさに目を奪われる。
ほんとにそれはキレイで。

「雨降ってよかったねv」
「あぁ。思わぬものが見れたしな」

そう言って優しく抱きしめてくれた。
ふわっといい香りがして、後ろを振り向いたら。
カミュと目が合って。

二人で笑った後。


優しくカミュの唇が触れた。




何度も繰り返される触れるようなキス。


それは深いものに変わって。

、愛してる」
「あたしも。今すごく幸せなの」
「私もだ」


そう言って。




あたしたちはまた唇を重ね合わせた。


<THE END>