貴女ト居ルト全テノ
怖サモ弱サモミンナ
予想以上感ジナイ・・・
正午の鐘が今日も聖域に響き渡る。
「サガー!!」
息を切らしながら教皇の間に飛び込んできた少女に私は目を向けた。
いつもと変わらぬ笑顔で視線を返したは
持ってきた大きな包みを私の目の前に置くと、いつものように私の机の前に椅子を持ってきて腰掛ける。
もう日常化してしまった光景。
私は仕事の手を休めると、の横に腰掛けた。
いつものように昼食を共にする。
他人から見たら何気ない風景だが、私にとっては一番心の安らぐ時間だ。
この時間は永遠ではない。
それは心から理解していることで。
私達には永遠は存在しないし、いつか死によって二人は引き裂かれるだろう。
それでもと分かち合う時が永遠であることを祈ってしまう。
愛するものと共にいたいという想いは堅いものなのだから。
食事を終えて話していると不意には不思議そうな顔をした。
・・・何か気に掛かることを言ってしまっただろうか。
私が考えているとが口を開いた。
「サガ、何かあったの?」
それはこちらの台詞だ、と思いながらもやんわりと否定する。
「嘘。」
しかし彼女はをついたまま、あっさり切り返した。
「何もないぞ?」
「嘘。絶対なんかあった。」
禅問答のようなきりのない会話をいくらか続ける。
だが最初に折れたのはの方だった。
「いつもそうやって隠し事するんだから・・・。」
頬を膨らませながら拗ねるかのように言ったその言葉に私はますますわけが解らなくなる。
には隠し事などしたことはないのに。
私はいつも実直なまま向かい合っているではないか。
は頬を膨らませたまま続けた。
「時々こんな顔して遠く見てるんだもん。何かむつかしいこと考えてるんでしょ?」
そう言いながらは指を眉間に押し当て、皺を作ってみせた。
の言っていることに呆然としてしまったが、次に瞬間、私は思わず噴出してしまっていた。
明らかに嫉妬する彼女に。
今目の前で小さな頬をこれでもかと膨らましている少女に。
あぁ、この目の前の少女のなんと愛らしいことか。
そしてには到底敵わないなと感じる。
機嫌を損ねてしまったらしいは
無言で弁当やら水筒やらを片付け始める。
慌ててそれを制止すると恨めしげな目で睨まれた。
「お仕事の邪魔になっちゃ悪いから帰るわ。」
いつになく刺々しい口調に少し引きながらも、
そっとを腕の中に閉じ込める。
小さな体はすっぽりと腕の中に納まってしまった。
「笑ってすまなかった。」
そう言って瞳を覗き込むとは頬を赤らめた。
「ほんとにそう思ってる?」
「当然だ。」
「じゃあ何考えてたの?」
・・・これ以上不機嫌になられては困る。
観念した私は先程考えていたことを打ち明けた。
静かに、しかし一言一言力強く。
自分の想いの全てを吐き出すかのように。
「そんなこと考えてたんだ・・・」
がポツリと呟いた。
はっとしてを見つめる。
「あたし、今のことしか考えたことなかったから、そんなこと考えられるサガはやっぱり大人だなぁって思った。」
はにかみながらそう告げたに心の中でそっと呟く。
私は大人だからそんなことを考えるのではない。
ただ、そんなことを考えてしまうほど、不安に押し潰されそうになっている、弱い人間なのだと。
そして気付く。
そんな私だからこその存在が必要なのだと。
その笑顔に、言葉に幾度救われたことだろう。
「ありがとう。」
自然と口をついて出た言葉。
急にどうしたのかと言いたげに、
不思議がって見つめ返すに返事代わりに口付けを送る。
深く、深く。
愛情と感謝の気持ちを込めて。
<THE END>