俺は蟹座のデスマスク。
聖闘士の頂点である黄金聖闘士の一人。
本年とって23歳。
只今彼女のと喧嘩中。
事の起こりは3日前。
愛してるだの愛してないだの恋人にはありがちの喧嘩。
いつもならそこで2人和解して・・・となるハズだった。
しかし今回に限ってキレたは俺の言葉も聞かないで帰ってしまった。
しかもなんだ?
こんな時に限って教皇のジジィが「視察に行ってこい」だの「たまってる書類を片付けろ」だので、俺はいつになく多忙な毎日を過ごしていた。
もちろんその間もからの連絡は一つもなくて。
オイオイ?!もしかしてこのまま自然消滅か?
・・・いや、そうなっちまったらマジでシャレになんねーんだけど。
「ハァ・・・」
思わず口をついて出たため息を投げ出して巨蟹宮まで戻ってきた。
まったく俺の書類のどこがご不満なんだよ!
出張先の旨いもんとかも書いてやったのによ。
あぁ、本気で鬱になってきた・・・。
もしかして隣のオニイサマに鬱をうつされたんじゃないだろうな?
石の廊下を抜けて自室への扉を開く。
明かりをつけて・・・・俺は本気で声が出なくなった。
「おかえりv勝手にお邪魔してるよ」
そう言ってニコニコ馬鹿面さげて笑っていたのは喧嘩中ので。
でもそこにはなんだかあったかいようなくすぐったいような雰囲気があって、俺は勝手に安堵している自分に気付いた。
しばらく驚きで口がしまんなかったけど、それをなんとか収めて。
「オイ、なんでお前がここにいるんだ?」
「知りたい?」
「・・・ってどうでもいいわ」
そんなこと気にするのもなんだし、とりあえず隣に座って。
肩を抱こう・・・と思った瞬間は身を翻して。
「その前に言うことがあるんだけど」
「あ、何だ?」
「決まってるじゃない?」
そう言って意味ありげな顔をしたになんとなく心臓がドキドキして。
も・・・もしかしてマジで別れるとか言い出すんじゃないだろうな?!
勘弁してくれよ・・・。さすがの俺もここからちょっぴり逃げ出したい気分だぜ。
でもそんなこと気にした風もなくはただじっと俺を見てて。
その時ふいにその目から涙がぽろぽろ零れて。
ほんとは慰めなきゃいけないのに、俺の腕は鉛みたいになってちっとも動こうとしない。
「・・・・ごめんね」
「え?」
「あたし、もうダメだから・・・。だからごめん」
消え入りそうな声で吐き出されたその言葉に一瞬時間が止まった。
もうダメって・・・、それってもうダメってことなのか・・・。
わけわかんないことを考えながらも俺の頭は朦朧として。
ぼーっとしたままその姿を見てたら急に首に重みを感じて。
「もう――――!離れてる間すっごい寂しかったんだから!!」
「・・・・へ?・・・・・・・・・ってオォイ!!」
思わず我に返った瞬間叫んじまった。
違うのか?違うのかよ?!
それって別れるってことじゃないのかよ!!
「ごめんね。勝手に怒ったりして」
「いや・・・。ってよかった・・・」
「ん、何が?」
「い、いや、何でもねぇよ」
実は別れるかもって怯えてましたなんて口が裂けても言えるかぁぁぁ!
しかもしかもコイツが紛らわしい言い方するから!!
「オイ」
「なぁに?」
問い詰めて話してくれた理由は至極簡単で。
俺が見習いの女聖闘士を食事に誘っていたのがダメだったらしい。
しかもミロと2人で誘ってたのに俺一人で言ってたと思ったらしくて。
俺が視察に行っている間にミロから聞いて、何度か電話をしたらしいが繋がらなかった・・・って。
アレ?俺、携帯ずっと持ってたハズ・・・。
抱きついたまんま自分世界に入ってるをそのままにして、俺はズボンのポケットを探ってみた。
「携帯がない・・・」
「うそ?」
「いや、マジで」
慌てて荷物とか探ったんだけど結局見つかんなくて。
「ごめんな?連絡とれなくて」
結局不安要素を作り出してしまったのは俺自身ってことかよ・・・。
でもそれをは快く許してくれて。
「明日ね、買いにいこ?」
「あぁ。ってあのさ、お前も変えるとか言ってたよな?」
「うん。もう今の動作が怪しくてね・・・」
「一緒に新しいの買わねぇか?」
「でもあたしまだお金ないよ?」
「バカ。そんぐらい出してやるよ」
そう言ったら嬉しそうに笑って。
あぁ、この顔が最高だ。
この3日間、俺がずっと見たかった顔だった。
改めて痛感する。
この笑顔が俺にとってどんなに大事なのかを。
コイツがいることが今の俺には絶対条件だってことを。
俺は蟹座のデスマスク。
聖闘士の頂点である黄金聖闘士の一人。
本年とって23歳。
只今、今のところ人生で一番最高の時間を堪能中。
<THE END>