雲一つない青い空。
聖域は今日も快晴なり。





「ヒマだなぁ〜」

手元の草をむしりながらミロはぽつりと呟いた。

今日は久しぶりの休日。
訓練所のすぐ側、青々とした草に覆われた聖域でも数少ない緑溢れる所。
そこに一人座って訓練風景などを見つめていた。

「ほっんとヒマ・・・」
「そんなにヒマなの??」
「・・・あ」

急に笑顔で現れた少女にミロの顔が思わずほころぶ。

〜、どこ行ってたんだよ。探したのに〜」
「え、そんなに探した??」
「うん。日本まで行ったよ」
「またまた★」

実は本当に日本まで行ったのだが。
とにかくご機嫌になったミロは子犬みたいににくっついて。

「今日は休みだからどっか遊びにいってるかと思ってたの」
と一緒にどっか行こうって思ってたんだけど、いなかったからここで寝てたんだ」
「ごめんね。ちょっとアテネまで出てたの」

の頬にミロの髪が触れる。
その柔らかな巻き毛をすこし掴み取るとそっと顔を埋める。

「お日様の匂いがするv」
「え??」

ミロも自分の髪の毛をかいでみる。

「そんな匂いしないぞ??」
「あたしにはわかるの」

そう言って微笑むをミロはそっと抱き寄せて。

「どうしたの??」
「ううん。何となく嬉しくなっただけ」
「そう」

の黒髪にそっとキスを落としながら答える。
シャンプーの匂いとそれとは少し違った温かな匂い。

「キレイだな」
「何が??」
の髪の毛」

そのまっすぐ伸びた髪をミロは愛しそうに握って。
何度も何度も梳いて。

「ミロの髪もすごくキレイよ」
「俺の髪すっごいくせっ毛じゃないか」
「でも金色でくるくるしててあたしは好きよ」

そういいながらミロの髪を指に巻きつけて遊ぶ。
その髪は絡みついたかと思うとぽろっと指からこぼれる。
それを楽しそうに何度も繰り返して。


「なぁに」

の指からそっと髪の毛を取り上げて。

「ミロ??」

そうたずねたとたん、唇にやわらかなものが触れた。
その温もりには目を閉じて。


ちゅっ。


そう音を立てて唇が離れて、また触れる。


ふいに唇から温もりが消えて。

「ん・・・??」

目を開くと、そこにミロの顔があった。

「その顔大好きなんだ」
「どの顔??」
「キスが終わって目開く時の顔♪」

にっこり笑ってそんなことを言うミロには顔を真っ赤にさせる。
すると、ミロはの顔にいくつもキスを降らせて。

「くすぐったいよ」
「でもこうしていたいんだ」

ミロの唇が触れるたびに、吐息が肌に触れて、その吐息にはますます顔を赤くして。

「もう、やだ、ミロってば」
「俺にキスされるのイヤ??」
「ヤじゃないけど・・・」
「じゃ、いいだろv」

そっとの顔を手で包み込んで、再び深く口付ける。
の手がミロの手に重ねられ、そのまま二人で、草の上に倒れこんだ。

、大好きだよ」
「あたしもよ」

二人で草の上に寝転がって空を見上げる。
どこまでも澄み切ったギリシャの空。
優しく吹く風にただ二人で目を閉じて。


ミロの指がの頬をくすぐる。
それに心地よさそうにしていたがふと目を開けて。

「あれ??」
「ん??」

そっとミロの指を掴むと、そこにうっすらとしたキズを見つけては思わず声をあげた。

「ここ、切り傷できてるよ??」
「あぁ。さっき草を千切ってたからその時切ったのかも」
「ちゃんと消毒しなきゃ」
「そんなんなめてたら治るよ」

そう言って、ミロが指をなめようと持ち上げる。
その時、指先に何か暖かいものを感じて慌てて顔を上げた。

・・・??」
「もう大丈夫だよv」

ミロの指をくわえていたがにっこり笑って。
今までのことに呆然としつつもミロもはにかんだように笑って。

「もういっこケガしてるんだ」
「どこ??」

そう尋ねると、ミロはそっと自分の唇を指差して。

「ここ☆」

そして軽くウインクをする。
それには苦笑して。



そっとついばむようにミロの唇に触れた。



「早く治ってねv」
がいる限り、一生治んないよ」
「ほんとに一生??」
「うん。アテナに誓うよ」

そう言うと二人で笑い合って。




静かに時間が流れていく。
何もしない、ある休日の午後。


雲一つない青い空。
聖域は今日も快晴なり。



だからこんな日は二人で過ごそう。

二人で何気ない幸せをかみしめよう。


<THE END>