眠りについたお姫様を守るようにお城はいばらに囲まれ、お城の人は皆眠りにつきました。
よい魔女がお姫様が起きた時、一人で寂しくないようにそうしたのでした。
でもお姫様は愛する人が現れるまで、ただ一人ベッドで眠り続けたんでしょう?
少しかわいそうなSleepin’Beauty。
「どうしたの?」
ソファの上に寝転んでるカノンが放つ視線が微妙に気になって声をかける。
でも返ってきた答えはそっけないもので。
「寝る」
「は?」
「眠いんだよ」
「眠いって・・・」
でもその言葉は拾われることなく宙に消えて。
あたしはぼーっとカノンが寝室に消えていくのをただ見守ることしかできなかった。
「・・・カノンのバカ」
さっきまで彼がいたソファに寝転がってそう呟いた。
そこはちょっとだけ温もりが残っていて。
「好きなんだけど〜チャチャチャ♪・・・アホらし」
ふてくされてソファに顔を埋める。
聖闘士に恋愛は禁止なんだって。
こないだ誰かが言ってた。
改善されつつあるらしいけど、いつになることやら。
なんだか悔しくなって。
カノンが消えていった寝室の扉を一睨みすると、そのまんま、ふて寝することにした。
瞼に柔らかいものが触れる。
何だろ?
羽とか動物じゃないっぽい。
そっと目を開けると、目の前に・・・
「カノン?!」
「・・・・・・!」
すごく至近距離のあった顔が慌てて離れて。
珍しく顔を真っ赤にしたカノンがいた。
「・・・。急に起きたら驚くだろうが」
ぼそっとそう呟く。
そんな・・・。別に急に起きたかったわけじゃないのに。
ふと視線を落とすと、カノンの手に握られているものが見えた。
「毛布・・・。持ってきてくれたの?」
「・・・あぁ」
って何だかむくれてるんですけど?!
・・・ご機嫌ナナメなのかしら?
「風邪をひかれたらかなわんからな」
「・・・ありがとう」
手渡してくれた毛布を受け取ってお礼をいう。
なんだか嬉しい。
気を使ってくれたことも。
それにあたし、ここにいてもいいのね。
「寝るなら帰れ」とは一言も言わなくて。
カノンはあたしが毛布を広げたのを確認すると、また寝室に向かおうとした。
その時、自分でも信じられないような行動をとって。
「何だ?」
いぶかしげにカノンが振り返る。
なぜかあたしはとっさに袖をひっぱちゃって。
「どうかしたか?」
「い・・・いや・・・」
「・・・もう寝るぞ。疲れてるんだ」
疲れてるんだ。それなら寝かせてあげなくちゃ。
ってそう思ってるのになぜか腕は動かなくて。
それに気付いたらしいカノンが小さく喉を鳴らして。
「なんだ?一緒に寝て欲しいのか?」
「・・・ほえ?」
今、なんて言った?!一緒に寝る?!
いや、一緒に寝れるなんて嬉しいけど、何で?!
パニくってる間にすでにカノンはソファに横になっていて。
あたしはいつの間にかカノンの上に乗っかっていた。
「ほら、ごそごそしてないでさっさと寝ろ」
「そんなこと言われたって・・・」
そう言いながらもカノンの胸に顔を押し当ててみたりして。
あ、すごくしっかりしてる。
まぁ、聖闘士なんだから当然なんだけど。
そんなことを考えながらも微妙に眠くなってきて、突然の幸せに浸りながら目を閉じたその時。
「俺のこと好きか?」
「・・・うん」
「そうか。俺ものことが好きだ」
そっか、カノンもあたしのこと好き・・・って今何て?!
それになんか半強制的に告白させられた?!
「あ・・・カノン・・・?!」
でも一人で慌ててるあたしを他所に、カノンはすごく落ち着いてるみたいで。
「好きな男と寝れて幸せだろ?」
「・・・って何言って?!」
「返事は?」
「・・・はい」
「俺も幸せだ」
「・・・うん」
そこでやっと気付いた。
あたし・・・、ハメられたんだ。
でもすごく幸せ。
カノンが優しく頭をなでてくれて。
今までで一番幸せ。
そう思ったらすごく眠くなっちゃって。
そのまま眠ってしまった。
あたしは世界で一番幸せなSleepin’Beauty。
<THE END>