どうしたの、そんな顔して。
もしかして妬いてるの?
それならもっともっと妬いて。
アタシのこと想って。愛して。
もっともっとアタシに溺れて。







「よう、。今日はまたどうしたんだよ」

巨蟹宮を通り抜けようとしたあたしにデスマスクが声をかける。

「何が??」
「何がってそんな格好してどうしたんだって」
「あ、コレ??」

あたしはそう言って、着ていた洋服をつまむ。
それは肩のあいてるジーンズをリメイクしたワンピース。
確かにあたしの普段の格好とはちょっと違う。

「別にどうもしないけど暑いし、たまにはいいでしょ??」
「だからってなんでそんな格好なんだよ・・・」
「どうしたのよ、急に」

明らかにいつもと様子が違う。
なんかいつもよりちょっと機嫌が悪そうで。
こっち見ようともしないで。

「ねぇ、どうかしたの??」
「何がだよ」
「なんかいつもと違うわよ」
「違ってねーよ」

はーん。どこまでもシラを切るつもりなのね。
それならこっちにも手があるんだから。

「さっき言ったの嘘」
「は??」
「ほんとは今から買い物に行くの」
「買い物?アテネにか?一人でか?!」
「そうよ」

スカートをふわっと翻してデスマスクの方を見る。
最近どこにも連れてってくれないし。
もしかしたらデートできるんじゃないかって。
あたしの予想では、そこで「俺も行く!」と言う・・・。

ハズだった。


「誰が行かせるかよ」
「へ・・・??」

思いがけない言葉を聞いてあたしはそこに固まった。

「そんな格好で行かせるかってんだ」
「な・・・なんで格好が関係あんのよ!」
「関係ある!そんな格好、他の男に晒すつもりかよ!」
「やだ、何言って・・・うわぁッ!」

急に体が宙に浮く。
あたしはデスマスクに抱えられたまま、巨蟹宮の私室へ。


広々としたリビング。
正直一人で住むにはかなり贅沢なんだけど。

あたしはそこのソファにどかっと下ろされた。

「お前わかってんのか?」
「何が??」
「何がって・・・」

デスマスクはそれを言ったきり頭を抱えてしまった。
ねぇ?何で??
すっごく気になるじゃない!!

ってもしかしてさっきのこと?!

「あの・・・」

そう声をかけようとした瞬間、デスマスクが急に顔をあげて。

「俺は・・・ヤなんだよ・・・」
「嫌って・・・」
「お前がほかの男の前でそんな格好するのがヤなんだよ!!」

そう叫んで背けた彼の顔は真っ赤で。
え、あたしがこの格好するのがヤなの??
でもほかの男の前って・・・。

「おい」
「何??」
「その格好で街出るんなら俺はと別れる」
「は・・・。急に何言ってんの・・・??」
「俺は本気だからな」

ふざけてんのかと思ったけど、その顔は真剣そのもの。
でも何でそこまで話が飛んじゃうわけ?!

「ちょっと待ってよ」
「何だよ」

うわ・・・。すっごい怖い顔してる・・・。
でもここで怯んだらあたしの負けだわ!

「いっつも一緒に買い物に行ったらさ、
 こんな格好の女の人ばっか見てるじゃない」
「おぅ。そそられるじゃねーか」
「・・・・・・。じゃ、何であたしはしちゃダメなの??」
「お前だけはしちゃいけねーんだよ」

何で・・・。何でダメなのよ。
そんだけあたしには色気の欠片もないってこと?!

「お前に色気がねーわけじゃないからな」
「じゃ、何でよ・・・。てかなんでわかったの?!」
「お前の考えることなんかすぐわかるんだよ」





その後しばらくおんなじこと言って。
急にデスマスクがため息をついた。

「なぁ、。わかってくれよ」
「どうわかれってのよ」

なんかすごく疲れた・・・。

そんなこと思ってたら急に抱きしめられて。
肩にデスマスクの頭がのっかるのがすぐわかる。

「デス・・・」
「ほんとはな、この部屋に閉じ込めてぇくらいなんだ」
「閉じ込める・・・??」
「あぁ。を誰にも見せたくないんだよ」
「・・・・・・。」
「でもそんなことできねぇから、我慢してんだ」

それから小さな声で話してくれた。
始めは自慢したくてあちこち連れて行ったこと。
でもそのうち、誰にも見せたくなくなったってこと。

そんなこと聞いてたらこっちが恥ずかしくなっちゃって。

「言っとくけど、お前といるとこ見られるのが嫌ってわけじゃねーからな」
「うん」
「誰かがのこと見んのにさ・・・嫉妬してんだよ、俺は」

最後にほんとに小さな声で言われたことがたまらなく嬉しくて。
思わず彼の背中を抱きしめて。

「デスマスク」
「何だよ」
「あたしのこと好き?愛してる??」

そう聞いたら触れてた頬がどんどん熱くなって。

「愛してなかったら嫉妬なんてしねーよ」


一番聞きたかったその言葉。
それ聞いちゃったらさっきまでのわけわかんない気持ちも全部吹っ飛んじゃって。
すごく幸せな気分になちゃって。


「あたしもvv」


そう言うともう一度その背中を強く抱きしめた。








どうしたの、そんな顔して。
もしかして妬いてるの?
それならもっともっと妬いて。
アタシのこと想って。愛して。
もっともっとアタシに溺れて。


<THE END>