「みょ〜ん・・・」
「・・・・・・」
「ねぇ〜。遊んでよぅ・・・」
「・・・瞼を引っ張るのは止めたまえ」
「だって目開けてくれないんだもん」

が処女宮に来てからすでに2時間が経つ。
その間何をしていたかというと・・・。

「遊んでってば〜」
「私にはそんなヒマはない」
「・・・さっきまで寝てたクセに」
「寝てはいない。瞑想していたのだ」

シャカはの腕を振り払うとまた指を構える。
はそんなシャカの目の前に座り込み、その姿を見ていた。

(髪の毛キレーだよねぇ・・・)

ふとそう思い、自分の茶色く染めた髪を見る。

(ぎゃあ・・・。枝毛発見・・・)

「一人で何をごそごそしているのだ」
「うひゃ・・・ッ」

急に話しかけられては思わず掴んでいた髪を引っ張ってしまった。

「いひゃい・・・」
「馬鹿な娘だ」

そう言っての髪を優しくなでる。
その仕草には嬉しそうに笑って。

「シャカの髪キレーだなって見てたの」
「そんなに綺麗か?」
「うん。キラキラしててまっすぐなの」
「そうか」

そしてうっすらと笑みを浮かべる。
最も神に近い男も想いを寄せている女性に褒められるのは嬉しいらしい。

暫くの髪を弄んでいたシャカが急に立ち上がる。

「どうしたの?」
「どうやら瞑想できるようではないのでな」
「邪魔した?」
「全くもってその通りだ」

冷たく言い放ってもその口元は笑っていて。
もいつものことだとわかっているので別段気にも留めていない。

「少し、外にでも出るか?」
「うん!」

は勢いよくシャカの腕にぶら下がる。

「重いぞ」
「わかってるもーん♪」
「わかっていてやっているのか」

シャカは呆れたようにため息をつくと、をぶらさげたまま処女宮の裏、沙羅双樹の園に向かった。









風に乗せて花の柔らかな香りが漂ってくる。

「ねぇ、ここってシャカが作ったの?」

シャカの膝に頭を乗せたままは尋ねる。
ここでも彼は座禅を組んでいて。

「ねぇ、何でシャカはいつも座禅を組んでるの?」
「・・・人が答える前に次の質問をするな」
「じゃ、一緒に答えたらいーじゃない」

その時、はふと目を開いて。

「目、開けてよ」
「何故だ」
「シャカの目が見たいの」

胸の前で手を組んでお願いポーズをとると、シャカは馬鹿にしたように鼻で笑って。

そっとその碧眼をのぞかせた。


「きゃーーーvv」


はくすくす笑いながらシャカのおなかに顔を埋める。

「何を言っているのだ」
「だってすごいことが起こるんだもーん」
「そんなわけないと何度言えばわかるのかね」

シャカはそういうとを引き剥がして。
さっきのように自分の膝の上に戻らせる。

はまだ笑ったまま、シャカの髪に指を絡ませる。

「君はそんなことばかりしてよく飽きんものだな」
「シャカも瞑想ばっかりしてるじゃない」
「私は神と対話しているのだよ。君とは違う」
「どうせあたしは煩悩にまみれてますよぅ〜」

はそう言ってわざと頬をふくらませる。
それを見たシャカは満足そうに笑って。

「わかればそれでよいのだ」

得意そうにそう言った。




「ねぇ、それでさっきの答えは?」

がシャカの髪をひっぱって催促する。

「ん、何のことだ」
「ここをシャカが作ったのと座禅してるの〜」
「・・・君は母国語もろくに喋れんのかね」
「それより答え〜」
「・・・私が作ったのは初めだけ。あとは神と対話をするためだ」

シャカはさらっとそう言ってのける。

「意味わかんないよ・・・!」
「おや、君に合わせてみたのだが」

少し拗ねた表情をするを見つめると
シャカはふいにその唇に口付けた。

そっと触れるだけで唇を離すと。

「およ?煩悩が残ってますよ〜」

が意地悪っぽく笑う。

「まだ煩悩が残っているから修行をするのだ」
「それ偉そうに言えないよ」

そう言われてシャカもふっと笑って。

「しかし煩悩があってもよいものだな」
「何で?」

の問いに答える代わりにシャカの顔が近づいてきて、先程とは違った深い口付けが繰り返される。


名残惜しそうにその唇を離して。

「わかったかね?」
「・・・うん///」

頬を赤く染めたをその目でまっすぐ見つめると、もう一度その髪をなでて。


そして再び唇を重ね合わせた。


<THE END>