「いけいけいけそこだッ!ってくっそ―――!!」

の家にデスマスクの声が響き渡る、六月十八日午後八時半過ぎ。
の家に押しかけたデスマスク、ミロ、カミュ、シュラ、カノン。彼らが観賞しているのはサッカーワールドカップ。韓国対イタリア戦。





今から二十分ほど前。

「あれ? 何か用?」
「いや、と一緒に青春の喜びをかみ締めようと思ってな!」

にっこり微笑むミロを筆頭とした酒が入って臭い青年たちは意味不明なことをのたまっての家に乱入してきたのだった。
そしてつけたのがワールドカップ。

「もう見たくない……」
「ああ。日本はトルコに負けたらしいな」

さりげに女心を解さないシュラの痛い一言。ちなみに彼の祖国、スペインはすでに八強の一員となっている。

別にサッカーが死ぬほど好きなわけじゃない。
それでもやはり母国が勝ち進んでいく姿を見ると妙にドキドキして、はずっと日本の試合を見てきた。
しかしそれも今日で終わった。トルコに先制の一点を入れられた日本は取り返すことのないまま、その試合を最後に世界の桧舞台から消えた。

「いいではないか。フランスは即行国へ帰ったぞ?」
「でも前回優勝したじゃない」
「うっ……」

慰めようとして声をかけたカミュはその痛烈な一言でその場に固まる。
その凍りついたカミュの隣にいながらもとからサッカー好きなミロとデスマスクはただひたすらヒートして、もはやの家はシベリアとデスクイーン島が一緒にあるような状態だった。

「すげー! 見たか、今の足裁き!」
「いや、むしろあそこに追いついたのがすげぇよ!」

母国イタリアを応援するデスマスクはもう画面にかじりついて見ている。それの後ろで歓声を上げるミロを見てはふとした疑問を投げかけた。


「そういえば、ギリシャは?」


ミロとカノンの母国ギリシャの試合を見ていないのを思い出して、が口にしたその疑問に皆がそちらを見る。

「そういや……」
「私は見た記憶がないぞ」

皆が考えこむその場を崩したのはカノンだった。怖いくらいの笑顔を見せたカノンはそっとの肩を叩き。

「ギリシャはな、ヨーロッパ予選でイングランドとドイツに敗退したんだ」
「それってつまり――」


「ワールドカップに、参加してないんだ……」


ミロのとどめの言葉に周りの人間が本気で凍りついた時。



『イタリア、1点先制――――――!!!』


テレビから聞こえたアナウンサーの声と歓声がシベリアと化したそこに虚しく響いた。



その後、一週間ほど聖域ではワールドカップの話が禁止されたらしい。


<THE END>