五月三十日、双児宮。



「なに?」

サガの膝の上に頭を乗せたまま、は声のした方を向いた。

「突然だが、今日が何の日か知っているか?」
「ほんとに突然だね……。って今日って何日だっけ?」
「五月三十日だ」
「五月三十日ね――あ!」
「わかったか?」

何かを閃いたらしく、を嬉しそうに覗き込んだサガは次の瞬間玉砕される。

「知らないとでも思ったの〜? 今日はゴミゼロの日!」

自慢げに人差し指を立ててそう言い放った
サガは脱力のあまりソファの背にもたれかかった。
はその顔を不思議そうに見て。

「どうかした? 違った?」
「大違いだ……」
「ええっ? ギリシャでは何か違う日なの?」

自分の答えが違っていたと知ってはまたうんうんと考え出した。その姿に一瞬ドキッとしながらも眩暈を覚えて。
ふぅ、とため息をついてサガは口を開いた。

「今日は私の誕生日なんだ」



「何でもっと早く言ってくれなかったのよ〜!」
「すまん。てっきり知っているものだと思ったのだ」
「知ってるわけないでしょ!」

自分の膝の上に寝転んだまま、ぷりぷり怒る少女に、サガは苦笑しながらも詫びを述べる。
しばらくそのようなことをしていると、ふいにが目を細めて。

「サガ、誕生日おめでとう」

にっこり笑って言われたその台詞と何よりもその笑顔にサガは思わず見惚れて。

「サガ?」
「あ、ああ。どうもありがとう」

我に返って飛び出た言葉はわずかながらの礼。それでもそれを聞いたは嬉しそうに笑って。

「じゃあ、早速パーティーの準備しないとね! それにプレゼントも!」

そして、勢いよく起き上がった。しかし、ふいに腕を引っ張られて、落ち着いたところはサガの腕の中。

「な、何……?」

ビックリしたのか聞き返すの肩に顔を埋めてサガはその体を抱きしめる。

「ちょっ、苦しいよ……」
「私は――」
「くるし……って何?」
「私はに祝ってほしいのだ」

「え?」

ふいに紡がれたその言葉の意味を求めてが振り向く。その時。
の唇に柔らかなものが触れた。

しばしの沈黙の後。そっと離れたサガの唇から、声がすべりだす。

、私はお前を愛しているのだ……」
「えっ……」

あまりに急な展開についていけず、呆然とするの唇は再びサガによって塞がれる。

「何で……?」

やっと口付けから開放されたが発した第一声はそれで。その言葉を聞いて、サガは自分の願いが叶わなかったのだと思った。
やりきれない気持ちにサガがふいに下を向いた時、ふわりと鼻先をくすぐる香りと共に肩に重みを感じて。
サガが顔を上げたそこには頬を赤く染めて膨れるがいた。

……?」

思わずその名を呼ぶと、彼女はそっぽを向いたまま。

「ずるいよ」
「は?」
「私が先に言おうと思ってたのに」

聞き違えたのかと思って黙っているサガの方を向いて。

「私もサガが好き」

その言葉にまるで魔法がとけたかのようにサガの意識は引き戻される。

「それは本当か?」
「嘘言うわけないじゃない」
「それはそうだが……」
「信じられない?」
「……ああ」

じゃ、と呟いたの顔がサガに近づいてきて。


「これでOK?」

離れたの顔をまじまじと見つめた後、サガの顔にこぼれるような笑みが浮かんだ。

「最高だ……!」
「何が?」
「今までで一番素晴らしいプレゼントだ」
「そう?」

サガは笑ったの頬に触れると、その体を引き寄せて。

「ありがとう」
「どういたしまして」

そして二人は恋人として初めて口付けを交わした。



Happy Birthday to YOU
Happy Birthday to YOU

Happy Birthday dear my SWEET DARLIN'...!

Happy Birthday to YOU


<THE END>