ポセイドンは壺に封印されたにも関わらず、
いまだに地上を我が手に、という野望を諦めることはなかった。
しかし、アスガルドの一件からヒルダは用心深くなり、
そうそう海へとおびき出すこともままならない。
「どうしたらよいものか」
そう思いアテナの周辺を見回すと、
なんとも好都合なことに聖域の中に一般人が紛れ込んでいる。
「よし、あの女に決めよう」
そう決めるとポセイドンは彼女の夢の中にそっと忍び込んだ。
「よ」
「ん、誰?」
「我の名は海神ポセイドン」
「神様が私に何か用ですか?」
そう問いかけたにポセイドンはごてごてとした指輪を差し出し。
「これをお前にやろう」
「すみません。いただけません」
「なぜだ。これを持てば地上を支配できるのだぞ」
「それは大変魅力的ですが、受け取るわけにはいきません」
丁重に断りを入れたにポセイドンはかっとなって叫んだ。
「なぜだ!なぜ、神からのものを受け取れんと申すのか!」
それには少し残念そうな顔をして。
「ごめんなさい。私、金属アレルギーなんです」
その言葉を聞いたポセイドンは、
先ほどの以上に残念そうな顔をしながら去っていった。
「昨日、夢の中にポセイドンが出てきたのよ」
「あらまたそれはどうして?」
「地上を支配できる指輪をくれると言ったの」
「指輪?まさかもらったわけじゃないわよね?」
驚きの表情をした沙織には頷いて。
「趣味が悪かったし、嫌な予感がしたからやめておいたわ」
「それが賢明ね。彼がよこす指輪は不吉なものばかりなのだから」
そこまで言って沙織はふと問いかけた。
「ところでどうやって断ったの?」
「金属アレルギーだって言ったら消えていったわ」
得意気にそう答えたに沙織は。
「彼の野望は野望のまま終わりそうね」
真実に気付かない哀れな海神を思って笑った。
+++一言++++++++++
金属アレルギーで引き下がるポセイドンって…。
指輪と聞いて最初に頭に浮かんだのがアスガルド編でした。
(03/08/29 作成)